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神戸地方裁判所 昭和49年(ワ)699号 判決 1977年2月28日

原告

更生会社神戸ネクタイ株式会社

管財人

赤木文生

右訴訟代理人

池上治

神田靖司

被告

株式会社メンズロマン

右代表者

笹田了

右訴訟代理人

清木尚芳

藤井昭治

主文

一、被告は原告に対し、金九二八万三、一三〇円およびこれに対する昭和四九年七月二四日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は三分し、その一を原告の、その余を被告の、各負担とする。

四、この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

一、請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金一、六六九万六、五〇〇円およびこれに対する昭和四九年七月二四日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二、請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の共張

一、請求原因

1  神戸ネクタイ株式会社(以下、「更生会社」という)は、昭和四七年三月七日、神戸地方裁判所に対する会社更生手続開始の申立がなされ、同裁判所より同月八日、「右申立の日以前の原因に基づく債務の弁済を禁止する」旨の保全処分決定を受け、更に同年八月二六日午前一〇時、会社更生手続開始の決定を受け、原告がその管財人に選任された。

よつて原告は更生会社の営業および財産等について一切の権利義務を承継した。

2(1)  被告は、昭和四七年三月一〇日頃、更生会社より、その倉庫(同社代表取締役大槻正三郎の自宅敷地内所在)にあつた左記商品(以下「本件物件」という)の任意引渡を受けて持帰り、全て売却処分した。

(イ) カツターシヤツ 六、二六八枚(単価一、〇〇〇円、価格合計六二六万八、〇〇〇円)

(ロ) 同特価品 三、〇〇九枚(単価五〇〇円、価格合計一五〇万四、五〇〇円)

(ハ) ニツトウエアー 四〇六二枚(単価二、〇〇〇円、価格合計八一二万四、〇〇〇円)

(ニ) 同特価品 一、〇〇〇枚(単価八〇〇円、価格合計八〇万円)

(ホ) 以上総計 一万四三三九枚(総額一、六六九万六、五〇〇円)

(2)  被告は右物件の任意引渡を受けた当時、更生会社に対する前記更生手続開始の申立がなされ、かつ、前記保全処分がなされていることを知つており、しかも被告は、自己の更生会社に対する売掛金債権確保のため右物件の引渡を受け、これを処分したものである。

3  被告は、「昭和四六年一〇月四日、被告と更生会社との間において、同日から昭和四七年三月三〇日までの間、一、〇〇〇万円を限度とする布帛製品の継続的取引、或はこの取引に関し振出し、もしくは裏書した手形小切手について、前記商品を譲渡担保とする旨の契約をしていたことに基づいて、本件物件をその譲渡担保物として更生会社から引渡を受け、かつ処分した」と称している。

4  しかし、更生会社が被告に対し本件物件を引渡した行為および被告がこれを処分した行為は、被告にとつては、更生会社から弁済を受けたと同一の結果となる行為である。

譲渡担保権者は更生担保権者として会社更生手続に参加してのみその権利を行使し得るとの制約を受けているにも拘らず、ひとり被告のみが更生会社から実質弁済を受けたと同様の結果となる本件物件の前記引渡および処分行為は、更生債権者はもとより更生担保権者をも害することが明白であり、被告は右害することを知つて右行為をなしたものである。

右行為当時、すでに更生会社は支払停止に陥り、更生手続開始の申立がなされ、かつ、右申立の日以前の原因に基づく債務の弁済の禁止、会社財産の隠匿、或いは債権者による財産持出し等の事実上の処分や、権利の譲渡、担保の設定等の法律上の処分禁止等の保全処分命令がなされていたのであり、更生会社の詐害の意思の存在および被告が右事実を知つていたことは明白である。

従つて右引渡および処分行為は、会社更生法(以下「本法」という)七八条一項一号に該当するので、原告はこれを否認する。

かつ右行為は、更生会社の支払の停止、更生手続開始の申立以後になされたものであり、同条一項二号の、更生債権者等を害することを知つてした行為、および、担保の供与、債務の消滅に関する行為に該当するので、原告は同条同号によりこれを否認する。

また、右行為は、更生会社が支払停止後なされ、債務弁済禁止等の前記保全処分命令により、その時期および方法が同会社の義務に属しないものであるから、同条三号にも該当する。よつて原告は同条同号により右行為を否認する。

5  よつて原告は、被告が本件物件全てを売却処分しているのであるから、同物件の代償として、前記否認権行使の結果、右否認されるべき行為の当時の価格、すなわち前記総額一、六六九万六、五〇〇円の価額の賠償と、これに対する本訴状送達の翌日たる昭和四九年七月二四日以降支払ずみまで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二、請求原因に対する被告の認否<省略>

三、被告の主張

1  被告は、昭和四六年一〇月四日、更生会社との間に、次の商品継続取引、手形行為並びに根担保権設定に関する契約をし、公正証書を作成した。

(一) 取引元本限度額 一、〇〇〇万円

(二) 取引期間 昭和四六年一〇月四日から同四七年三月三一日までとする。

(三) 債務履行遅滞の揚合の遅延損害金は日歩三銭とする。

(四) 次の一に当る事実があつたときは、本契約に基づく一切の債務につき弁済期限の利益を失い、催告を要しないで直ちに未済金全額を支払う。

一 債務者が個々の債務履行を遅滞したとき

一 手形の不渡処分を受けたとき

一 他の債務のため、所有財産に対し強制執行または執行保全の手続を受け、もしくは競売、破産の申立があつたとき

(以下略)

(五) 更生会社は、本件取引によつて将来発生すべき金銭債務の履行を担保するため、本件物件を被告に譲渡し、被告に右物件の占有を移転した。

(六) 更生会社は右物件を被告のために占有保管する。

(七) 更生会社は、被告から譲渡担保物件引渡の要求があつたときは、異議なくこれに従つて直ちに右物件を引渡すこと。

(八) 更生会社が債務の履行を遅滞したときは、被告は譲渡担保物件を適当な方法で処分し、その換価金をもつて本債務の弁済にあてることができる。

2  右契約に基づき、被告は更生会社に対し、ニツト、布帛製品を継続的に販売し、昭和四七年三月一〇日現在で、同社に対する債権は合計一、〇一七万一、一七三円であつた。

イ 約束手形金債権(期日未到来)四通合計四八六万二、五一〇円(右手形の内容は別表イ記載のとおり)

ロ 小切手金債権(先日付)一一五万四、七九八円(右小切手の内容は別表ロ記載のとおり)

ハ 売掛金(但し昭和四六年一〇月四日以降の継続取引による)四一三万八、六三〇円

ニ 委託商品代金残(但し、昭和四六年中委託)一万五、二三五円

以上合計一、〇一七万一、一七三円<以下事実省略>

理由

一請求原因1項並びに、同2項(1)のうち、被告が昭和四七年三月更生会社から、原告主張の場所にあつた本件物件の任意引渡を受けて持帰つたこと、および被告が右物件の一部をのぞきこれを売却処分したことは当事者間に争いがない。

二次に、更生会社が被告から継続的に商品の供給を受けていたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、更生会社は被告より、昭和四四年頃から、ニツト、布帛製品等を仕入れていたものであるが、右両者間には、昭和四六年一〇月四日、被告主張のとおり(被告の主張1項記載)の、商品継続取引、手形、小切手行為並びに譲渡担保設定契約(以下「本件商品取引および譲渡担保契約」という)が結ばれ、同月八日その旨の公正証書が作成されたこと、右契約に基づき、被告は更生会社に対し、更にニツト、布帛製品等を継続的に販売し、昭和四七年三月一〇日現在で、右取引による被告の更生会社に対する債権は、被告主張のとおり(被告の主張2項記載)の内訳で合計一、〇一七万一、一七三円であつたことが認められ、また<証拠>によれば、更生会社は、昭和四七年三月八日頃、同月七日に前記更生手続開始の申立を受けたことを、被告を含めた更生会社の仕入先に知らせ、かつ同日午後右仕入先の担当者に同社に集まつてもらい、更生手続開始の申立をされた事由を述べるとともに、協力方求めたがその際被告からは、社員の訴外児玉康人外二名が出席したこと、その二、三日後、被告より前記児玉康人外が更生会社を訪れ、前記譲渡担保契約による譲渡担保権を実行するため、本件商品取引および譲渡担保契約(七)に基づき、更生会社代表取締役大槻正三郎に対し、本件物件の引渡を要求し、同月一一日頃、右大槻の指示により、更生会社から被告に対し本件物件の引渡しがなされたことが認められ、更に、<証拠>によれば、被告は、右取引を受けた後本件物件中に、被告において製造販売した商品(数量合計一、一二五枚)があつたため、当該商品については被告の売値のまゝで前同年三月一一日返品扱いとし、その価額(右更生会社への売値)が合計二二八万三、一三〇円であつたので、これを前記被告の更生会社に対する売掛金債権の内金に充当処理し、その旨更生会社に通知したこと、従つて前記売掛金債権残は右充当により一八五万五、五〇〇円となつたこと(従つてまた、被告の更生会社に対する債権は、同年三月一一日現在で合計七〇八万八、〇四三円となつたこと)、そして、被告は、本件物件中右返品扱いとした分以外を、昭和四七年四月二〇日頃、大分県の訴外株式会社トキワに代金七〇〇万円で一括処分し、右代金を前記小切手金、売掛残代金、委託商品残代金の各債権および、約束手形金債権の一部に充当したこと、被告が前記の如く本件物件の引渡を受けたのは、本件商品取引および譲渡担保契約に基づき、譲渡担保権実行のためなしたものであり、また右物件を前記の如く処分したのは、右契約に基づく譲渡担保権の実行としてなしたものであること(但し、更生会社が債務の履行遅滞となり、被告が右物件につき処分権を取得したのは、後記のとおり、昭和四七年四月一日である。)が認められ(る)<証拠判断省略>

三ところで、前記認定事実によると、被告と更生会社との前記譲渡担保設定契約による譲渡担保はいわゆる処分清算型に属するものと認められるから、ここで、被告の処分権取得時期について調べておく。

被告は、更生会社が昭和四七年三月八日保全処分命令を受けた事実は、本件商品取引および譲渡担保契約(四)の定める「他の債務のため所有財産に対し強制執行または執行保全の手続を受けたとき」に該当し、また、更生会社が同月初め頃一般に支払の停止をしたので、右事実は右契約(四)に定める「手形の不渡処分を受けたとき」に該当すると主張するが、本法三九条所定の保全処分は、右契約にいう強制執行または執行保全手続に該るとは解されないし、右主張のように更生会社が支払停止をしたとしても、右支払停止をもつて当然手形の不渡処分を受けたと同視することもできない。また、<証拠>によると、更生会社が被告に対して昭和四七年三月一五日付で振出した前記小切手は、同月一一日支払人により支払拒絶されたことが認められるが、小切手の振出人は、小切手金についての主たる債務者ではないから、右事実のみをもつて直ちに同月一五日更生会社の債務不履行があつたとすることはできないので、被告のこの点の主張も採用しない。

しかしながら、本法三九条の弁済禁止の保全処分命令の効力は、更生会社に対し、任意弁済を禁ずる不作為命令にすぎないものと解されるところ、<証拠>によると、更生会社が被告に振出した支払期日が昭和四七年三月三一日である約束手形は、右同日呈示されたが支払がなかつたことが認められ、そうすると、右日時の経過した時点で、更生会社は、本件商品取引および譲渡担保契約(四)に基づき被告に対する一切の債務につき弁済期限の利益を失い、従つて被告は右契約(八)により、右同年四月一日の時点では、更生会社に対する前記債権につき本件物件に対する処分権を取得していたものと認めることができる。

四1  そこで、更生会社が被告に本件物件を引渡した行為および被告が右物件を処分(一部を前記のとおり返品扱いとしてその価額を自己の債権に充当したことも含む)した行為が、本法七八条一項一ないし三号に該当するかを検討する。

2  ところで原告は、昭和四六年一〇月四日なされた前記譲渡担保契約自体が同法七八条一項四号に該当するのでこれを否認する旨主張するが、<証拠>によると、右契約は、主として、更生会社および被告において、両者間の取引額を増額するためになしたものであり、右譲渡担保権の設定は、既存債務についての担保の供与ではなく、右契約と同時に締結された前記商品継続取引、手形、小切手行為に関する契約に基づき将来生すべき更生会社の債務についての担保の供与であると認められるのみならず、右担保の目的の価額と、担保債務の価額とが、いちじるしく均衡を失するものと認められる証拠もないので、右譲渡担保契約は前記条項に該当しないから、原告の右主張は採用できない。

3  前記認定事実によると、被告が更生会社から本件物件の引渡を受けた行為は、前記譲渡担保契約に基づくものであり、また、訴外株式会社トキワにその一部を売却処分した当時は、被告において本件物件の処分権を取得していたものであるから、このような、更生手続開始前の動産の譲渡担保権の実行々為が否認の対象となるかをまず調べる。

更生手続では、担保権者はすべて更生担保権者として手続開始により手続の制約に服し、権利の変更の対象とされるから、手続開始決定前に担保的地位を実現する行為も、他の担保権者との関係で公平を害し、また更生会社財産を減少せしめることになるので、否認の余地を生ずることになる。

動産の譲渡担保の実行の場合についても、債権者の行為の有無や譲渡担保の形態(いわゆる帰属清算型、処分清算型、当然帰属型)の如何をとわず、実質的にみて、弁済期において債権者による充当行為がつねに存すると考えて、当該行為を否認の対象とし、目的物の返還(処分清算型、当然帰属型の場合)、価額の返還(処分清算型の場合)を求めることができると解される(兼子一監修、条解会社更生法中巻参照)。

4  そこで本件の場合もすゝんで本件七八条一項一ないし三号該当の有無を判断するに、前記認定事実に<証拠>を併せ考えると、被告が更生会社から譲渡担保権実行のため本件物件の引渡を受けてこれを前記の如く処分(一部返品扱いとしてその価額を被告の債権に充当し、他を訴外株式会社トキワに売却処分したこと)した行為は、更生会社の他の更生担保権者との関係で公平を害し、同会社財産を減少せしめることになり、更生債権者、更生担保権者の更生計画による権利の変更の程度を増加させるものであり、従つて右更生債権者らを害するものであるから、右行為は、更生手続開始の申立後になされた更生債権者等を害する行為であるということができ、かつ右行為のうち、譲渡担保権実行のため本件物件の引渡を受けた行為と、被告において処分権取得後に訴外株式会社トキワにその一部を売却処分した行為は、本法七八条一項二号所定の債務の消滅に関する行為に該当するということができる。

被告主張の如く、被告においてなした本件物件の処分価格が適正であるとか、右処分が有利な処分であることは、右更生債権者らを害するとの認定に影響をおよぼすものではない。

さらに、前記のとおり被告が本件物件の引渡を受けたのは、更生手続開始の申立後であり、<証拠>によると、被告は、前記の如く更生会社につき更生手続開始の申立がなされていることを告げられた後、右物件の引渡を受ける前に、弁済禁止の保全処分命令のなされたことをもきいていることが認められ、また<証拠>によると、被告が右物件の引渡を受けたのは、更生手続開始の申立があることを知り、普通にしていては自己の更生会社に対する債権の決済が遅れるか、支払われなくなると思い、右債権確保のためなしたものであることが認められ、右各事実によると、被告は、本件物件の引渡を受けこれを処分(一部返品扱いとしてその価額を自己の債権に充当した行為も含む)した行為当時、更生手続開始の申立があつたこと、および右行為が、更生債権者、更生担保権者を害する事実を知つていたものと認めることができ、この認定を左右するに足る証拠はない。

5  右のようにみてくると、更生会社が被告に対し本件物件を引渡し、被告においてこれを処分した行為は、本法七八条一項二号に該当するから、その余につき判断するまでもなく、原告は右行為を否認することができるというべきである。

そして、原告が本訴状送達をもつて右行為を否認し、同訴状が昭和四九年七月二三日被告に到達したことは訴訟手続上明らかである。

五本件物件のうち、被告が製造販売した商品につき、被告がこれを返品扱いとして処理したことは前記のとおりであるが、弁論の全趣旨によると、右返品として処理した分は、特定性を失つて被告の財産たるその商品に混入してしまつたものと認められ、また、本件物件のうち右処理した分以外の分は、被告が訴外株式会社トキワに売却処分しているのであるから、結局原告は、本件物件全てについて価額賠償し得べきところである。

そして価額賠償の場合の価額算定の基準時は、否認外行使の効果が否認の対象たる行為の時に遡つて行為がなかつた状態を生ぜしめるものであることからみて、右行為の時と解するのが相当である。

そこで本件の場合の行為時たる昭和四七年三月ないし四月当時の価額を調べるに、<証拠>によると、本件商品取引および譲渡担保契約につき作成された公正証書に添付された書面には、担保の目的物件たる本件物件の明細として、原告主張の価額が表示されていることが認められるが、<証拠>によると、右表示価額は、更生会社でつけた右物件の当時の平均売値であり、特価品は仕入値に近いが、普通品は三、四割の小売マージンが含まれていること、本件物件は、前記倉庫に、ニツトウエアー、カツターシヤツ別に数十個のケースに入れ保管された状態のまゝ前記譲渡担保に供されたものであるが、その後一部商品の出し入れもあり、また主として更生会社において昭和四六年一月から同年八月頃に仕入れた夏物であるが、その一部は昭和四四年、同四五年に仕入れたものも混つており、いずれも同会社の販売店で売れ残つた商品であること、従つて右物件には、衿の型くずれ、陳列による汚れもあり、加えて、ニツトウエアーについてはフアツシヨンが一年毎に変ることなどから、右物件は簡単には売れないものであること、以上の事実が認められ、右事実に<証拠>を合わせると、被告が訴外株式会社トキワに売卸処分した代金は巳むを得ないものであり、右処分された物件の換価代金として不当に低額なものではなく、昭和四七年三、四月当時の本件物件の価額は、被告が右物件中、返品扱いとした分につき被告が評価した二二八万三、一三〇円およびその余の分につき前記一括売卸処分した代金七〇〇万円の合計九二八万三、一三〇円をもつて相当と認める。<証拠判断省略>

六以上みてきたところによると、被告は、原告の否認権行使の結果、価額賠償として、九二八万三、一三〇円およびこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和四九年七月二四日以降右支払ずみまで商事法定利率年六分(本件否認の対象となつた行為が商人間の行為であるから)の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるというべきである。

七よつて、原告の本訴請求は、右認定の限度で正当であるからこれを認容し、その余は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(武田多喜子)

別表 <省略>

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